20年前、聖母聖誕節の後のある午後のこと、ちょうどわたしが子供を寝かしつけながら夢と現の間にいた時、目の前に突然、一柱の巨大な『女神』の姿が現れました。はじめは観世音菩薩が降臨したと思い、誠心誠意膜拝していたところ、顔を上げてよく見ると、この荘厳なかたちをした『女神』は観世音菩薩ではないことに気がつきました。その頭上には尊貴なる『冠』をいただいていたからです。わたしは手を合わせてこう問いました:「あなた様は媽祖様でいらっしゃいますか?」聖母は慈悲を湛えた微笑みを浮かべながら頷かれると、「まさしく。」とお答えになりました。わたしは急ぎ、誠心誠意聖母様に向かって挨拶を述べました。「聖母様にはご機嫌麗しゅう。」
この時聖母様はわたしに向かって矢継ぎ早に告げられました。「あなたはじきに海を越え、日本にて事業を始めることでしょう。この事業にはわたしが力添えをしますから、必ず成功します。そしてあなたが事業を成し、十分な富を蓄えた暁には、約束しなさい。道場を建てすべての痛苦と貧窮の中にある衆生を助け、ひろくこれらを救うのです。彼らが苦しみを離れ、安らぎを得ることのできるように。」
聴き終えた後、わたしはどう答えるべきかわかりませんでしたので、しばらく考えた後、聖母様にこう答えました:「聖母様、わたしの子はまだ2つです。わたしはいま家を、台湾を離れる予定はありません。日本を訪れる予定もありません。ですから…」聖母様は断定しました、「あなたは必ず日本へ行くことになります。」わたしはまた少し考えこう答えました:「聖母様、わたしには事業を起こす用意もできてはおりません。それに、道場を建てるのにはお金がたくさん要りますし、わたしにそんなお金はありません。聖母様、わたしには本当にどうしようもないのです…」この時になって、聖母様は落涙されました。それを見てわたしまで涙が止まらなくなり、そんなものがどこにあったのか、勇気を振り絞り聖母様に向かってこう答えました、「聖母様、もしあなた様のおっしゃる通りにわたしの事業が成功し、十分な富を作ることができたのなら、お約束いたしましょう、わたしは日本に道場を建てます。すべての痛苦と貧窮の中にある衆生を助け、ひろく彼らを救います。彼らが苦しみを離れ、安らぎを得ることのできるように。」
この時聖母様は微笑まれ、また涙も止まりました。彼女はわたしにこう告げました:「事業は必ず成功します。心配せずとも良い。しかし口約束だけではいけません。判を押して誓うのです。」わたしが聖母様に親指を差し出すのと、聖母様は優しく首を振られました。そして、親指でなく、わたしの印堂(額)でもって一枚の疏文に印をしたのです。そしてわたしの目は覚めました。
今にしてみると、遠く20年も前から、聖母様は『東京媽祖廟』の誕生について、手はずを整えておられたのだと思います。